ヨーロッパにおける紋章について
日本には家紋があるが、ヨーロッパには紋章がある。
ヨーロッパの紋章は、戦場における識別証として特有の図形を描いたというのが始まり。
のちに組織や町が紋章を持つことになるが、基本的に人が持つもので、王族や貴族、騎士のみが持てるものだった。
日本の家紋の違いは権力や支配の象徴という意識が希薄だったことにあるだろう。
家紋がモノトーンでシンプルな柄に対し、紋章は鷹や獅子などの猛獣が色彩豊かに描かれていることから、うかがい知れる。
また、ヨーロッパでは個人を識別するために親や兄弟でも別のマークをつけていた。
そして、家紋との一番の違いは、紋章は同じものを作ってはいけないという厳しい決まりがある。紋章院という紋章を管理する役所があったほどだ。
今でいう商標登録を管理する特許庁のようなものであろう。紋章院は今でもイギリスに残っているそうだ。
紋章のデザインについて
紋章はエンブレムやクレストと呼ばれることもあるが、正式名称はCoat of Arms(コート・オブ・アームズ)と呼ぶ。
紋章のデザインは盾をベースにしている。盾(エスカッシャン)のみが描かれている場合もあるが、王室の紋章のように盾の周囲に盾持や兜飾、兜、マント、台座、標語などが記されたフルスペックの紋章を紋章一式という。
盾の形状はさまざまだが、ルネサンス以前は実戦で使われていた盾の形をしていて、ルネサンス以降は装飾過多となり、19世紀になるとシンプルな形になっている。
紋章に描かれた動物の意味
多くの紋章にはライオンや鷹、鷲、馬などゆかりのある動物が描かれている。
ライオン
ヨーロッパでは動物が描かれている国章の多くがライオンを採用している。百獣の王と呼ばれるように、勇気・力・権力などの象徴として利用されることが多い。
馬
古来より人との関わりから、忠実・戦争・勝利などのシンボルとして描かれていることが多い。トルクメニスタンの国章には同国で最も優れた品種が描かれている。
鷲
鷲もライオンと同様、採用される頻度の高い動物の一つ。鷲は最強の猛禽類ということで、空の王者と呼ばれてきた。紋章に用いられる場合、勇敢さ・強さ・遠眼・不死の象徴を意味している。
ローマ帝国が鷲を国章に使っていたことでも知られている。
グリフォン
紋章には想像上の生き物が描かれている場合がある。グリフォンもその一つで、鷲の翼と上半身、ライオンの下半身を持つ動物である。知識を象徴する動物として用いられる。