戦前から変わらないフォードのエンブレム
戦前から使われているエンブレム・ロゴ
創業当時のロゴはシンプルな現在のロゴと異なり、複雑なデザインであった。
1907年に、同社のチーフ兼エンジニア兼デザイナーのチャイルド・ハロルド・ウィリスによって変更された。
ウィリスはフォードの友人で、名刺のデザインも手掛けていて、その名刺で使われる筆記体の「Ford」の文字だけのシンプルなデザインであった。
以後、エンブレム・ロゴの字体は変わっていない。
1927年、「Ford」の文字と楕円を組み合わせ、現在も使われているエンブレム・ロゴを完成させる。フォード・モデルAのラジエーター・バッジとして採用された。
フォードのエンブレム・ロゴは「ブルー・オーバル」と呼ばれ、会社の愛称に。
ブルー・オーバルのデザインは100年近い歴史を誇り、BMWやアルファロメオのエンブレム・ロゴと同様に現在でも戦前のエンブレム・ロゴが使われる数少ない例である。
1976年、エンブレム・ロゴが立体的なデザインに変更。当時、安価な日本車がアメリカに進出し売上を落としていた。
会社の根本は変えず、デザインを近代的なものに変更するというのは、フォードの置かれた現状を打破するための決意表明だったかもしれない。
2003年、創業100周年を迎えたフォードは、ロゴを刷新。「センテニアル・ブルーオーバル」と呼ばれるデザインを採用した。
1976年にエンブレム・ロゴの立体感に、1927年のロゴに近いデザインに。現在もこのロゴが採用され、競争が激しい自動車業界に対し、戦い続けている。
フォード・マスタングに使われるエンブレム
フォードの代表的な車種であるマスタングには、走る馬のエンブレムが採用されている。マスタングのエンブレムは、北アメリカ大陸のプレーリー地帯の野生の馬を意味したものだ。
フォードは1960年代前半に跳ね馬をエンブレムにするフェラーリを買収しようとした過去がある。実際にマスタングの発売当初エンブレムがフェラーリに似ていると話題になったそうだ。
結局、レースにおける決定権などの条件があわずフェラーリ側が拒否したことにより交渉は決裂。
ささやかな復讐として打倒フェラーリをモットーに掲げたGT40を開発したフォードは、ル・マン24時間レースを連続優勝していたフェラーリを破り、4年連続でル・マンを制覇したのだった。
このエピソードが『フォードvsフェラーリ』という映画になっているので、興味があれば見てほしい。